隣は何をするひとぞ

濱田さんが消えて、2ヶ月が経つ。彼氏とじゃれあいながらきゃあきゃあ言う声も、マリオカートに熱くなるあまり「お前ぶっ殺す!!」と叫ぶ声も、もう耳に入ることはない。
一人暮らしを経験している人、とりわけワンルームの安アパートで生活をしたことがある人は分かってくれる話だと思うが、特に意識はしなくとも隣人の生活はありありと手に取るように分かる。性別、年齢層、習慣。たとえば、テレビをつけず、CDプレイヤーも作動させていない静かな空間に入り込んでくる生活音。さて眠りにつこうかとした時に、何気なく聞こえてくる会話。だいたい推測がつく。話をしたことはなく、顔すら見たことはないが、濱田さんはそこにあるべきものとして私の中で確かな存在感を持っていた。
はじめに異変に気がついたのは私の彼氏だ。最近やたらに隣が静かだという彼の言葉を発端に、なんとなく気になり始めた。確かに物音一つしない。得意のジュディマリの鼻歌も聞こえない。「さては、ダーリンと逃避行か??」なんて、話をした直後から隣人宅玄関におかしなものが増えていく。ドア前にサマーチェアー2脚。今頃海水浴?はたまたキャンプ?冬ですが・・・?子供サイズの長靴。なぜに21cmサイズ(推測)??そして、何者かが無理やり削りとったかのように名前がうっすら消えた表札。こわいです。裏組織に抹消されっちゃったの〜〜??濱田さん!!現在では、まぁ普通に日々過ごしているけど、玄関を出て階段を下ろうとすると、濱田さんち前を通らなければいけない。やっぱりまだある、椅子と靴。やっぱり少し気になる。


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