センセイの鞄の中身は・・・

もともと女流作家の小説は好きじゃない。
なんか、ドロドロしてて、偽善なうさんくささたっぷりだから。
が、しかし。
そんな私をして、
「この微妙な心の揺れは、ヤロウには書けまい!」と言わしめたのがこちら。

センセイの鞄川上弘美(平凡社)

谷崎潤一郎賞とやらを受賞し、15万部を売り上げた作品なのだそうだ。
最近はセカチューがやたら売れちゃって、数字だけ見るとたいしたことないなぁと思っちゃうけど。まぁ、あちらさんは小説という名の少女漫画だから比較にはならないのか。

この本を原作にしたドラマにはいたく感動した。主演はキョンキョンと、柄本明。元高校教師とその教え子が20年後に再会して、穏やかな恋物語を紡いで行くというストーリー。(自称も含む)サブカル好きはこれだけで、やられちゃうんだけど、何が良いってそれは、二人の間にたゆたう空気感。

一杯飲み屋でまぐろ納豆をあてに冷酒飲んだり、巨人のことで喧嘩したり、やってることはこれ以上ないくらい平凡なのに、なぜか、ゆったりと浮遊するパステル色の世界が二人の間にはあるのです。

私なんかの年だと(むしろ私?)、誰かと付き合うと、次は花火大会だ、やれディズニーシー行こうとか、イベントを起こすことが目的みたいになっちゃいますからね。
そういう関係って刺激的ではあるんだけど、あいだに隙間がある点線みたいな時間の流れ。

この二人は、別になんの事件が起こるわけでもなく、ありふれた日常なんだけど、酒飲みながら桜をゆっくりながめたり、季節を感じながら生きるっていう、螺旋的な付き合い方なんだよね。

「ダーリンが一週間も連絡くれない」とか、「私ばっかり好きで、愛され足りない」
とか感じたときに読むと、そんな考えが馬鹿らしくなって良いかもしれないですね。