道尾秀介さん直木賞受賞おめでとー

たったいま、録画していた、道尾秀介情熱大陸を見終えた。
もっともこころに残ったのは、「僕は追い込まれた人を描くのが得意なんです」
というくだりだ。
撮影場所が神社(と思われる場所)ということ、季節が夏、しかも真っ盛りというよりも晩夏に近い頃、
太陽はさんさんとしながらも、どこかひやっとする雰囲気があるシチュエーションであることが説得力を増した。

私が初めて読んだ道尾さんの本は『向日葵の咲かない夏』だ。ストーリーは町で起きる一連の事件、事故の解決に終始しながら、それが進行する設定としては、主人公を主軸としたゆがんだ家族関係である。
主人公の男の子が抱えるとても深い苦悩と悲しみと、やるせなさと、、、その描き方がとってもえぐくて、ひとことで言ってしまえばグロく、いっきに読み終えてしまった。
小学生の主人公にとって、世界のすべては、家と学校と、その周辺の地域であり、客観的な大人から見れば、そのあたりはさっさと断絶してしまえばいいのでは、と思ってしまうような環境も、彼にとっては人生のすべてである。
ある一定の視点による、世界のゆがみと絶望。
大小の差はあれ、誰もが経験する痛み。
その表現が、とっても自然で、できれば触れたくないけれども触れずにはいられないアンタッチャブルな世界がそこにはある。

ミステリーとしてストーリがー進行しながらも、根底で描いているのは人間のエゴ、思い違い、独りよがり。
そんな二面性が彼の作品の最大の魅力であると思う。
スリードを誘発し、結果ドンデン返し、という手法がそこに活きる。

「追い込まれた人間」を目の当たりにする読者である私たちは、自分のイヤな面やいやらしい面、俗世的な部分をそこに見出す。ストーリーの結末を知りたいけれど、読み進めることがためらわれる。それは、自分自身を反映して、見つめることが怖いから。
ミステリーの枠にとらわれない魅力がそこにはある。