まんなかの美

This is it」でのマイケルジャクソンは、圧倒的な存在感と、まるで後光が差しそうなほどの慈愛に包まれ、なんだかとっても人間離れした神々しさを放っていた。

歌がこの上なくうまい、50代には絶対に見えないダンスのキレ、演出の勘がズバ抜けている…など、目に見えるスキルやらセンスやらそんなものをはるかに超えた大きなオーラがそこにはあった。

中盤、わたしが彼の歌の中で2番目に好きな曲(一番は「Billy Jean」!)「Human Nature」で、最も盛り上がる「ha〜♪」の高音部分を唄いあげる彼の横顔が、この映画の象徴と言えるかもしれない。

薄暗い中でスポットライトを浴び、しなやかに髪を垂らした、男性とも女性とも見てとれる、
なんとも中性的な表情をたたえていた。
男性や女性の枠を超えた、人間美といってもいい。

男・女

black ・white

老・若

 そして、

生・死

どちらにも属さない、というか、二つの相反する要素が絶妙に混ざり合った、まんなかの美があの瞬間の彼の神々しさの理由であり、彼を失ったからこそ私たちがあの映像を目にすることができたことを考えると、美を教えてくれるものではある反面、とても残酷で皮肉だなぁと感じるのです。